2020年度活動報告
2021年7月4日
2020年度活動報告
● 事業の成果
視覚障害者及び一般市民に対して点字の普及・啓発活動を行うために2013年度から活動を開始した当協会は、2020年度は特に新しい取り組みを行わず、これまで行ってきた各事業のさらなる充実に努めることを目標にしましたが、新型コロナウイルス感染拡大のため、当初予定していた事業のほとんどを中止せざるを得ない状況となりました。
2018年度から年に2箇所で開催している「中途視覚障害者に対する点字学習指導法研修会」は、当初第5回を東京で、第6回を大阪(堺市)で開催する計画を立て、特に東京での研修会は、参加者募集を行って定員の20人から申し込みを受けていました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、東京での開催を5月から2021年1月に延期して第6回とし、第5回を11月に大阪(堺市)で行うことを事業計画に盛り込んで準備を進めましたが、コロナ収束の見通しがつかないため、結果的にはいずれも中止となり、多くの方々にご迷惑をおかけしてしまいました。そこで、新たな研修会の代わりに、過去4回の研修会の修了者74人に対して、研修会受講後の取り組みの状況、指導上の質問などのアンケート調査を行い、結果を冊子にまとめて修了者に配布し、情報の共有と今後の指導に役立てていただくようにしました。
なお、「中途視覚障害者に対する点字学習指導法研修会」を今後も継続して開催するため、「2021年度日本郵便年賀寄付金配分事業」に助成申請を行ったところ、年度末に助成決定通知をいただきました。
例年、11月1日の日本の点字制定記念日に、サイトワールド会場で開催している点字普及のための講演会は、サイトワールドが中止となったため、今年度は開催を断念しました。一方、2020年11月1日は、日本の点字制定130周年という節目に当たるため、日本点字委員会が関係団体に呼びかけて、「記念講演会」を行う企画が提示されたので、当協会も積極的に参加し、主催4団体の一員として企画・実施に参画しました。
国による日本の視覚障害者の点字理解状況の調査が近年行われていないため、日本の点字制定130周年記念日に当たる2020年11月1日付で、厚生労働大臣宛てに、「身体障害児者実態調査」の調査項目に「点字理解状況」を入れるよう要望書を提出しました。
そのほか、2017年度に開発した凸面点字器「トツテンくん」の普及を全国各地で会員が行いました。なお、凸面点字器の販売を行う(有)読書工房によると、2021年3月31日までに累計6,357台の販売実績があったとのことです。
(2020年度は1,008台販売)
また、ホームページを維持して広く点字に関する情報提供を行ったことにより、一般の方々、学校関係者、マスコミ、点字サイン製作業者からの問い合わせを受けるようになり、それぞれに対応してよりよい点字の普及に努めました。
2020年度末の会員の状況は、次のとおり。
個人正会員 39、団体正会員 5、個人賛助会員 9、団体賛助会員 1
会員は、1都1道2府19県に在住しています。
● 事業内容
1.視覚障害者への点字の普及に関する事業
①中途視覚障害者に対する点字学習指導法研修会の開催
事業計画では、以下のように第5回・第6回研修会を予定していましたが、いずれも中止としました。
第5回 11月7日(土)~8日(日) 堺市
協力:堺市立健康福祉プラザ 視覚・聴覚障害者センター
第6回 2021年1月 東京都 (予定)
そこで、過去4回の研修会の修了者のアフターケアを兼ねて、修了者74人に対して、研修会受講後の取り組みの状況、指導上の質問などのアンケート調査を行い、結果を「中途視覚障害者に対する点字学習指導法研修会 修了者アンケート集計結果報告書」(2020年8月)として修了者に送付し、情報の共有を図るとともに、今後の指導に役立てていただくようにしました。
②凸面点字器普及事業
2017年度に完成した凸面点字器の普及を図り、中途視覚障害者が点字を学習する際の負担を軽減するとともに、小学生が短時間で点字の読み書きを体験し、商品や街中の点字サインを正確に読めるようにするため、加えて視覚障害者への正しい理解とサポートの方法を伝える取り組みを各地で行いました。さらに、トツテンくんを海外に広めるため、国際視覚障害者援護協会を通じて留学生として来日している各国の視覚障害者(10人)にトツテンくんを寄贈しました。
③Lサイズ点字普及事業
点字を触読できる視覚障害者を増やすため、引き続きLサイズ点字の普及を図るとともに、Lサイズ点字プリントサービス(実費徴収)を、団体正会員の「にじの会」協力のもとに実施しました。その結果、2団体と3人の個人からの依頼を受け、20件1,978枚のプリントサービスを行うことができました。特に、「中途視覚障害者に対する点字学習指導法研修会」修了者から指導に使うための依頼があり、この事業が僅かずつ広がりをみせています。
なお、丸紅基金へのLサイズ点字プリンター助成申請は今回も不採択となりました。
2.一般社会への点字の普及・啓発に関する事業
①一般向け点字学習啓発事業
親や教師が、子どもと楽しみながら気軽に点字を学ぶことができる点字学習用啓発資料「点字の世界へようこそ」をホームページ上で公開しています。これによって、凸面点字器による点字学習が広がり、点字学習のハードルが下がることが期待できます。
②ホームページによる点字普及事業
インターネットを通して点字の普及を図るため、ホームページの運営を引き続き行いました。ホームページあるいは電話によって問い合わせが寄せられるケースは、中途視覚障害者の家族からの点字学習に関する問い合わせ、点字サイン業者からの問い合わせなど、件数も少しずつ増えています。
③イベントによる点字普及事業
11月1日(日)の「日本の点字制定130周年記念日」に、関係4団体の共同主催による「記念講演会」を開催しました。会場参加者を制限し、YouTubeによる配信を行いました。
「日本の点字制定130周年記念講演会」
- 点字の昨日を知り、点字の明日を想う -
主催:日本点字委員会、日本視覚障害者団体連合、日本盲人福祉委員会、
日本点字普及協会
講演「点字は私の父、指点字は私の母」
講師 福島 智 氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)
講演「〈暁天の星〉から〈満天の星〉へ」- 点字をめぐる不易・流行 -
講師 岸 博実 氏(日本盲教育史研究会事務局長)
なお、例年参加する新宿NPO協働推進センターが行う「NPOセンターまつり」は中止となりました。
④点字サインの点検
全国各地で表示されている点字サインが適切であるかを機会あるごとに点検しました。
⑤全会員による全国各地での点字普及活動
全会員が全国各地で機会あるごとに点字普及のための活動を行いました。